プーアール舎 peu/art cottage

20世紀美術を研究しています

レビュー:国立アートリサーチセンター 国際シンポジウム。ワークショップ2023

みなさま、こんにちは

プーアール舎です。

標記のワークショップ・シンポジウムのレポートが公開されています。

国立アートリサーチセンターは、Tokyo Art Beatとタッグを組んで、シンポジウム等のレポートとして、イベント記録を公開しています。アート・プラットフォーム・ジャパン時代から引き続いたアウトソーシングで、独自の手法ですね。

 プーアール舎主宰は、下記に参加しました。

美術館はアーカイヴの困難さとどう向き合い、活用しているのか? 「国立アートリサーチセンター国際シンポジウム・ワークショップ2023」レポート #1|Tokyo Art Beat

 美術館の現場には、アーカイヴ的機能が高度に備わっていて、閲覧公開はなかなかできなくても、展示や収蔵のような美術館活動の根幹でアーカイヴが鍵になっていることがパネリスト方々のお話でよく示せました。ポーランドのウッチ美術館を私は1度訪問したきりですが、特異な歴史をもち素晴らしい常設展のある同館のお話を聞くのは念願でした。日本の戦後美術とも深い関係がある場所です。

 都合により1日限りの聴講になりましたが、衝撃的に印象深かったのは下記のパネルでした。

国際的なキュレーターが実践する「リサーチ」、そのポイントと課題を語る。「国立ア、ートリサーチセンター国際シンポジウム・ワークショップ2023」レポート #3|Tokyo Art Beat

 パネリストは、国をまたぐアクティヴィスト、中国の美術評論における「美術≒国家近現代史」観、映画発祥の近代史と中国古代から続く宇宙論を細部まで嚙み合わせるコンセプトの上海ビエンナーレ前キュレーター。話はそれぞれ噛み合ってはいなくても、互いの共感のなかで体を張った批評体験を交換しあい濃密でした。

 三者は話すうちにどんどん早口になり、もはやわたしにはついていけないハイスピード論調になりますものの、横田佳代子さんがスーパー早口同時通訳で見事対応してくださって、その芸もあわせて堪能できました。

主催者と登壇者のみなさま、まことにおつかれさまでした。ありがとうございました。

 

採録:「池田龍雄 画家が背負ったミッション」基調講演:光田ゆり

みなさま、こんにちは

プーアール舎です。

佐賀県立博物館・美術館 調査研究書 第48集』が2024年3月末に刊行されました。

そこに23年10月1日実施の

 基調講演「池田龍雄 画家が背負ったミッション」:光田ゆり

 クロストーク 池田忠利氏(アーティスト・龍雄実弟)、古賀史生氏(佐賀新聞記者)
         光田ゆり、野中耕介 (同館学芸員)

採録されています(加筆訂正をさせてもらいました)。

池田龍雄(1928-2020)の出身地における初めての展覧会、回顧展として佐賀県立美術館40周年特別展「あそび、たたかうアーティスト 池田龍雄」が開催された折の関連イベントでした。

池田先生がご生前、心から望みながらなぜか実現できませんでしたが、ようやく。

 

プーアール主宰は学芸員かけ出し時代からずっと、池田先生のご教示を受けることができました。彼は1950年代~70年代まで幅広く、抜群のご記憶力と広い人脈から、多くを知っていて闊達に教えてくださるのです。自分は「池田先生の70年代の営為を位置づける」という先生からの宿題を実現できていません。その反省の一部を、クロストークで話させていただきました。

以前、大規模な池田龍雄展が全国を巡回したとき、各館に池田先生は作品を少なからず寄贈されました。その時、購入された作品は1点もなかったそうです。小規模館の学芸員だった微力の自分には言う資格は全くないのですが、池田先生はなぜ与えるばかりで得ようとしないのか、なぜ先生には何も与えられないのだろうと思ってしまいました。あれほど長い間、日本の現代美術の良心ともいえる存在だったのに、ちゃんとした賞や立派な表彰からも無縁でした(機会があれば自分は推薦したのですがやはり無力で)。

でも、彼はそんな愚痴など笑い流すに決まっています。

30年くらい前でしょうか、「美術館を考える」イベントを行ったとき池田先生から

「僕は美術館に何も期待はしてませんよ」と笑顔で言われて、衝撃を受けたことを忘れません。自立した、自由な心ってこういうことなのだろうか、そうしたものは美術館には入ってこないのだろうか、そんなショックでした。

改めて、池田先生をなつかしく思い出します。

 

 

 

レビュー 石原友明芸術資源展 シンポジウム「もうこれで終わりにしよう」240330

みなさま 

こんにちは、プーアール舎です。

標記の件、展示とシンポジウムについて、参加させていただいた感想as忘備メモです。

 

☆関連シンポジウム「もうこれで終わりにしよう。」

   石原友明、佐藤知久(同センター教授)、岸本光大(同大@KCUA学芸員)、

   光田ゆり(プーアール舎主宰)

美術関係者が埋める会場を、ステージ底から眺めるだけで圧巻。

等倍に(実質に徹して)話そうとされる石原氏は、誠実さと理知のオーラを発光。

佐藤氏は芸術資源の収集と編集に心血を注ぎ、結果は抽象的にクールに展示する美学。

教え子でもある岸本氏が回顧展を企画、母にもわかるように美的に展示し、美術史的なものを除去して「かつて哲学書を片手に制作していた時代」の作家展をあえてSELFIESと呼んだ。石原作品群を、20世紀美術を参照して生まれた(面もある)と思っている美術史系?・異教のわたしは揺さぶられる。

石原氏がシンポタイトルを表記のように名づけたのは、わたしも感じている「現代美術」終焉後の空漠と関係があるかなと想像していたのだが、実際そうなのだとも思えたのだが、空爆の地のパラレルワールドには、別の美術がとっくに成立し、そこから見られた新たな「現代美術」があると実感した。

 

★石原友明展 SELFIES @京都市立芸術大学C棟7F大学院政策室701-708

 そのたびに「自分」を新たに定義し直し、メディアも手法もからりと変えながら自写像の連鎖を編み出してきた作家にふさわしい、工夫のある回顧展。

 各室を二分し、1+1シリーズづつ自然光のなかに展示。元来のスタイリッシュさが際立ち、コンセプトが映える。初出時と別の様相に見えた。完成作のみ、資料類なし。

 独立した部屋が長い廊下で断続する構成。先を見通せないスリリングさを楽しめた。

 

★石原友明芸術資源展 @芸術資源研究センターアーカイビング・ラボ

 2冊の本。作家の文章と、作家に対して書かれた文章の2分冊。最初期作と最近作が裏返したように組み合わされる2点展示。機材室に過去作のオートスライド展示。

 紙資料「資源」とともにある自分には、資源の抽象化とともに、ハードカバー本、オートスライドのアナログ感が嚙み合ったハイブリッド性が印象的。じっくり読みたい2冊に届きがたいかんじがするのも、それが「展示」というメディア特性。



 

 

石原友明芸術資源展 シンポジウム「もうこれで終わりにしよう」3月30日14:30~ @京都市立芸術大学

みなさま

こんにちは プーアール舎の光田ゆりです

 

昨年移転された京都市芸術大学新キャンバスで

石原友明さんの2つの個展が開催されます

石原友明芸術資源展のお知らせ | 京都市立芸大芸術資源研究センター (kcua.ac.jp)

石原さんは自写像を基軸に、多様なメディアを使い毎回異なる切り込み角度から

洗練され筋の通った作品を発表されてきました。

今回は芸術資源の視点から企画されるといいますから、どんな展示なのでしょう、

展示と並走するらしい「2冊の本」も含めて、とても楽しみです。

しかしながらシンポジウムのタイトルが気になります。

現代美術から次元を変えるのでしょうか

 

わたしは西宮市に住んでいた高校~大学生のころに、現代美術の面白さとかっこよさを石原さんたちに教えてもらったと思っています。考えてみると80年代半ばから、断続的にではありますが続けて作品を拝見してきたので、石原作品体験は、自分の現代美術体験期間をほぼカバーしてくれる年月になります。

モダニズムを読み直し、現実と自分との間に特異な空隙を差し込むような、石原作品から多くのことを学ばせていただいたと思っています。

感謝をこめて、おそれながら標記シンポジウムに参加します。

 

 

黒いミルクー北極光 大坪美穂展 対談 4月21日14:00~ @吉祥寺美術館

みなさま こんにちは

プーアール舎です

 

大坪美穂さんの個展が4月13日に始まります。

大坪美穂 黒いミルク―北極光・この世界の不屈の詩―|吉祥寺美術館 (musashino.or.jp)

 

大坪さんは団塊の世代より少し年長のアーティストです。

画家、インスタレーション作家として、半世紀以上制作を続けてこられました。

プーアール主宰は「地球・爆」という岡本信治郎さん主宰の共同制作プロジェクトに関わって、

メンバーの大坪さんを知りました。

   このプロジェクトは18年ほど続けられ、2019年に全貌が紹介されました

   地球・爆──10人の画家による大共作展 | 展覧会 | 愛知県美術館 (pref.aichi.jp)

 

大坪さんは白髪ボブの美しい方で、登山とダンスを楽しみ、お料理上手の酒豪です。

人見知りで引きこもりの自分が、美術の先輩として折に触れずっと家族とおつきあいさせていただけたのは、彼女がチャーミングで度量のある、人生の達人だからです。

達人は日々を多くの友人たちと楽しみながら、土台はしっかり反体制です。

 

4月21日14時から対談 大坪美穂+光田ゆり @吉祥寺美術館

 

 

 

 

 

bibliography「上なる如く、下もまた然り」白井美穂インタビュー 聞き手:光田由里 

みなさま こんにちは

プーアール舎です

 

府中市美術館「白井美穂=森の空き地」展(2023.12.16. ー 2024.2.25)

カタログが今月発行されました。

出品作品に加えてこれまでの白井作品が多数掲載され(デザイン:Tanuki)、

神山亮子さん、沢田遼さんのテキストも充実した、貴重な一冊です。

同書に

 白井美穂インタビュー「上なる如く、下もまた然り」 

 聞き手:光田由里(プーアール舎主宰)

が収録されているのでご案内します。

 

白井さんとは同世代です。彼女は活躍が早く、大学院在学中から頭角を表し、

とても華やかにしなやかに、大作を発表されていました。

1990年代を中心に

80年代~2000年代初頭の白井さんの活動と美術状況をともに振り返りました。

自分は最前線美術のバブルには近寄れず、

近過去の美術を地味に調べる仕事になりましたが、

白井さんの作品や同時代美術に興味をもって見ていました。

 

同館で開催された

アーティストトーク(2月18日)白井美穂+豊嶋康子 対談

がとても興味深く、5歳の年齢差が美術体験を左右する様子がリアルに伝わりました。

 

 

 

 

 

プーアール舎です

みなさま、こんにちは

光田ゆり と申します。

プーアール舎を

美術に関する自由な研究の場として始めます。

 

まずは20世紀美術に関するテキストを書くことから始めて

すこしづつ視野を広げていきたいと思いつきました

どうぞよろしくお願いします。

 

プーアール舎のロゴは、seita mihoco さんに作成していただきました。